人手不足の現場で何が起きているのか
日本の建設業は長く人手不足に悩まされている。業界団体の調査によると、技能職の求人倍率は7倍を超える水準で、仕事はあっても担い手が見つからない状況が続いている。都心の再開発やインフラの老朽化対策、災害復旧の需要は尽きない。現場の平均年齢は上がり続け、このままでは建設現場で働く人は今後さらに大きく減ると見込まれている。
ただ、こうした状況は働く側にとって悪い話ばかりではない。求人が増えれば賃金も上がる。国税庁の調査によると、建設業の平均年収は500万円台で、全産業の平均を上回っている。経験を積んだ技能者には、管理職に匹敵する報酬が提示されるケースも増えた。若い世代の入職が追いつかず技能の継承が課題になる一方で、給与と休日を改善して人を呼び込もうという動きが業界全体に広がっている。
主な職種と必要な資格
建設現場と一口に言っても、仕事の内容は職種によって大きく変わる。自分に合った職種を選ぶために、代表的な職種を整理しておこう。
| 職種 | 主な仕事内容 | 役立つ資格 | 収入の目安 | こんな人に向く |
|---|
| 大工 | 木造住宅の骨組みづくり、床や壁の下地、建具の取り付け | 建築大工技能士 | 経験とともに上昇、500万円前後の事例も | 手を動かすのが好きな人 |
| とび職 | 鉄骨の組み立て、足場の設置、高所作業 | 足場の組立て等作業主任者 | 高所作業の手当が付く現場が多い | 高所が平気で体力に自信がある人 |
| 左官 | 壁や床にモルタル・漆喰を塗る仕上げ作業 | 左官技能士 | 独立して活躍する職人も多い | 丁寧な仕上げを追求したい人 |
| 電気工事士 | 建物の配線工事、照明・コンセントの設置 | 第一種・第二種電気工事士 | 資格手当を出す企業が多い | 細かい作業が得意な人 |
| 配管工 | 給排水・空調設備の設置とメンテナンス | 配管技能士 | 需要が高く安定した収入が見込める | コツコツ作業を続けられる人 |
| 施工管理 | 工程・品質・安全の管理、現場全体の統括 | 1級・2級施工管理技士 | 現場の仕事の中では高めの水準 | 全体を見渡して調整するのが好きな人 |
最初の一歩として選ばれやすいのは、電気工事士や施工管理のように国家資格が明確な職種だ。資格があれば転職の際に有利で、現場でも任される仕事が広がる。一方、大工や左官のように現場経験を積みながら技能を磨く職種は、入職時のハードルが低い代わりに、一人前になるまで時間がかかる。自分がどんな働き方をしたいのかを先に決めておくと、職種選びがぐっと楽になる。
未経験から建設業に入る方法
建設業は未経験者を受け入れる体制を整えてきた。多くの都道府県で建設業協会が相談会や仕事体験イベントを開いており、職種の説明から実際の作業体験までを一日で行う機会がある。ハローワークや建設専門の求人サイトにも、未経験歓迎の求人が多数掲載されている。
入職後の流れはおおむねこうだ。会社に所属してから、安全衛生教育や特別教育を受ける。足場の組み立てや小型車両の運転など、特定の作業には技能講習の受講が必要になるが、これらの講習は会社が費用を負担するケースが多い。数年現場で経験を積んだあと、技能検定や施工管理技士の試験に挑戦するのが典型的なキャリアパスだ。
30代で営業職から転職したSさんは、都内の建設会社で大工見習いとして働き始めた。最初の半年は道具の名前を覚えるのが精いっぱいだったが、2年目から簡単な造作工事を任されるようになり、いまは資格取得を目指して夜間の講習に通っている。「体力に自信はなかったけれど、先輩が段階を踏んで教えてくれた」と振り返る。
地域によって事情も違う。東京や大阪などの大都市圏では再開発に伴う大型工事が多く、募集も盛んだ。地方では道路や橋、上下水道といったインフラの更新工事が中心で、地域に密着した企業で長く働きたい人に向いている。建設業はどこに住んでいても仕事がある、数少ない業界の一つだ。
外国人材が増える現場のいま
人手不足を背景に、外国人労働者の受け入れも進んでいる。建設分野の特定技能制度では、評価試験に合格して在留資格を得た人材が日本の現場で働いており、受け入れ企業には日本語学習や生活面の支援が義務づけられている。建設技能人材機構(JAC)が開講する講座では、母国語で学べる日本語教室や技能講習があり、現場で使う専門用語から安全衛生の基礎までを学べる。
外国人材と一緒に働く現場では、作業手順を写真や図で示す「やさしい日本語」の取り組みも広がっている。言葉の壁を乗り越えるための工夫が、結果的に新人教育の分かりやすさを高めているという話は珍しくない。
変わりゆく建設現場と働き方
建設現場の姿も変わりつつある。ICTを活用した「i-Construction」の取り組みでは、ドローンによる測量や3次元データを使った施工管理が導入され、測量や図面作成の一部がタブレットで完結する現場も増えてきた。若い世代にとって親しみやすい環境が整ってきている。
働き方も改善されている。従来は日曜と祝日だけが休みという現場も多かったが、週休2日制を導入する企業が増え、完全週休2日制を掲げる大手ゼネコンも出てきている。墜落防止のための設備投資や、重い荷物の運搬を機械で補う取り組みも進み、体への負担は確実に減っている。
建設業は「きつい・汚い・危険」と言われた時代から、変わりつつある。人手不足が続くからこそ、働く環境を整えて人を呼び込もうという動きが加速しているのだ。
建設現場で働くことを考えているなら、最寄りの建設業協会やハローワークで相談してみるのが早い。職種ごとの仕事内容や収入のイメージを直接聞ける機会は、想像以上に多い。資格や経験がなくても、現場は未経験者を受け入れる準備を進めている。一歩踏み出せば、日本社会の土台をつくる仕事に携わる道が開ける。